カルシニューリンをターゲットとして破骨細胞にアポトーシスを起こすためには破骨細胞におけるカルシニューリン-NFATシグナルのより詳細な解明が必要である。そのため、破骨細胞におけるカルシニューリン-NFATシグナルを簡便に測定する目的でNFATのルシフェラーゼベクターを安定発現するRAW264細胞株を樹立した。この系を用いればアポトーシスに向かうシグナルを活性化する様々な薬物を見つけ出すことが容易になる。これまでの破骨細胞からRNAを抽出しRT-PCRにより遺伝子変化を見る方法に比べて格段に迅速なアッセイ方法である。われわれはこの方法でオーファンリガンドライブラリーより、いくつかの薬物を見出した。また、カルシニューリンを創薬のターゲットとして考えた場合、その多彩な生理作用を考えると、カルシニューリン自体を抑制することは強い副作用をもたらすと考えられる。われわれは破骨細胞特異的に働く分子を同定し、その分子を創薬のターゲットとすることで、副作用なく骨吸収をコントロールできる可能性があると考えている。このため、ツーハイブリッドを行い、候補遺伝子としてPICKIを同定した。本研究において、Calcineurin BとPICK1が結合することを見出した。さらに、破骨細胞分化とともにPICK1の発現が増加していることからPICK1とCalcineurinの複合体も増加すると推測される。この複合体はPICK1により作用部位へ輸送、局在化され、基質であるNFATc1を選択的に脱リン酸化し、最終的に破骨細胞分化を促進する働きを有すると推測される。 本研究により、破骨細胞分化過程におけるCalcineurinの役割と、Calcineurinと結合するタンパク質としてPICK1が破骨細胞に発現することが明らかとなった。今後は、破骨細胞分化機構におけるPICK1分子の機能的役割を解明することにより、PICK1分子あるいはこれに関与する分子をターゲットとした破骨細胞形成を選択的に阻害する薬剤の開発にっなげたいと考えている.
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