研究概要 |
味蕾発生過程で神経が上皮に到達する時期の細胞分化解析の指標にするために、味蕾原基の形成に重要であるとされているSox2と味蕾基底細胞で強く発現するProx1について、免疫組織化学により、味蕾内の発現強度の比較解析を進めた。まず、未成熟な味蕾細胞が局在する味蕾基底部について解析した。その結果、味蕾基底部には、これまで報告されていたSox2を強く発現する細胞に加えて、味蕾を含まない上皮領域とほぼ同じ程度のバックグランドレベルで極めて弱くSox2を発現する細胞が存在することが明らかになった。また、Prox1は全ての味蕾基底細胞で発現が認められたが、その発現強度から基底細胞は2つのグループに分けられた。このうちProx1を強く発現する味蕾基底細胞には、その全てに強いSox2の発現が認められた。一方、Prox1の発現が比較的弱い細胞では、Sox2の発現強度が高い細胞とバックグランドレベルの細胞の2種類が確認された。その結果、Sox2とProx1の発現強度の比によって、味蕾基底細胞は3つのグループに分類された。さらに、味蕾のIII型細胞に蛍光タンパク質GFPを発現するマウス(GAD67-GFP mouse)を用いて、TRPM5(味蕾II型細胞に特異的に発現する)とSox2の免疫組織化学を行って、味蕾の伸長した成熟細胞を解析した。Sox2を強く発現する細胞は、GFP、TRPM5のいずれも陰性であり、これまで報告されている通り、Sox2がI型細胞で発現していることが示された。しかし、GFP陽性細胞の大部分はSox2を中程度の強度で発現しており、Sox2の発現強度と味蕾のI,II,III型の細胞種の分化に対応関係が有る可能性が新たに示された。
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