ピロカルピンやセビメリンは唾液分泌を促進し、口腔内を湿潤させる。最近、われわれはピロカルピンをラット腹腔内および脳室内に投与すると飲水行動が誘発されること、この行動は脳室内アトロピン前投与により消失することを明らかにした。さらに、スライス標本を用いた電気生理学実験およびc-fos免疫組織化学の結果から、ピロカルピンが口渇中枢に作用し、のどの渇きを誘発していることを示した。一方、セビメリンの腹腔内投与では、唾液分泌は促進するが飲水行動は促進しなかった。むしろ、アンジオテンシンIIによって誘発された飲水行動に対して、セビメリンは抑制作用を示すことを明らかにした。さらに、セビメリンはピロカルピンに比べて、腹腔内投与により顕著な昇圧反応を引き起こすことが判った。ピロカルピンおよびセビメリンの唾液腺腺房細胞に対する作用をカルシウムイメージング法を用いて検討したところ、ピロカルピンはセビメリンより低濃度で効果があること、両者の反応時間はインビボで観察される唾液分泌促進時間と比べて短時間で終了することがわかった。以上の結果から、ピロカルピンとセビメリンは、同じような細胞内メカニズムを介して唾液分泌を誘発すること、この効果を引き起こすためには、セビメリンの方が高濃度必要であることが判った。ピロカルピンやセビメリンが比較的長時間、唾液分泌を促進するように働くのは、唾液腺腺房細胞以外のレベルでの効果によると推定された。また、ピロカルピンは中枢に作用して口渇感を誘発するように働くこと、セビメリンは逆に、口渇感を抑制することが判った。
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