本研究課題においては、レンサ球菌が形成する初期バイオフィルムの抑制を目的にしている。本年度は、食用きのこのう蝕原性レンサ球菌のバイオフィルム形成を抑制する効果について検討した。 様々なキノコの抽出液とともに、Streptococcus mutansおよびStreptococcus sobrinusをポリスチレンプレートに培養して、その際に形成されるバイオフィルム量を定量したところ、デキストラナーゼ存在下において、シイタケから得た抽出液は濃度依存的にそれらの菌のバイオフィルム形成を有意に阻害することが明らかとなった。一方、それらの細菌の浮遊細胞の成長に影響を与えなかった。このバイオフィルム形成活性は、シイタケ抽出液を65度以上で熱処理すると失われたので、バイオフィルム形成抑制に関与する分子は、熱で変性するタンパク質等であることが示唆された。また、シイタケ子実体を収穫し直後に得た抽出液より、5日間室温に放置した子実体から得た抽出液が、S.mutansおよびS.sobrinusのバイオフィルム形成をはるかに強く抑制した。これらの所見から、このバイオフィルム形成活性を抑制する物質はシイタケの子実体の収穫直後より、収穫して数日経て産生さえることが示唆された。 これらの結果は、シイタケおよび関連キノコ由来分子をう蝕発生抑制効果薬として臨床応用できる可能性を示唆した。
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