研究課題/領域番号 |
20592183
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
米原 典史 奥羽大学, 薬学部, 教授 (70124534)
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研究分担者 |
竹村 元秀 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (70192169)
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キーワード | 求心路遮断性疼痛 / アロディニア / 痛覚過敏 / マイクロダイアリシス / グルタミン酸 / ノルアドレナリン / 高速クロマトグラフィ-電気化学検出器 / von Freyフィラメント |
研究概要 |
求心路遮断性疼痛(神経因性疼痛・神経障害性疼痛)は、末梢神経から脊髄を介し上位中枢へ知覚の情報が伝達される経路が遮断されることにより発症する。この痛みは、灼熱痛を中心とした自発痛、アロディニアや痛覚過敏などの感覚異常を伴う慢性痛であり、根本的な治療法は現在のところ確立されていない。このような痛みの発症機序として、感覚ニューロンの可塑的変化に伴う、痛覚神経系に対する交感神経系の影響が示唆されている。平成20年度は、求心路遮断痛の治療薬および治療方法の開発を行っに先立ち、求心路遮断痛発症機序の解明を行う目的で、求心路遮断痛発症動物を用い、末梢神経入力領域の脊髄腔内にマイクロダイアリシスカァーテルを挿入し灌流を行い、灌流液中のグルタミン酸(Glu:痛覚神経の代表的神経伝達物質)とノルアドレナリン(NA:交感神経の神経伝達物質)の量的変動を測定した。 【実験方法】SD系雄性ラット(250g〜300g)を使用した。神経因性疼痛モデル:ペントバルビタール(50mg/kg、腹腔内投与)にて麻酔し、左側坐骨神経を露出した。クロミック製縫合糸(4-0)で坐骨神経を4ヶ所緩やかに結紮した(結紮群)。対照実験として同側坐骨神経を同様に露出し偽手術を行った(偽手術群)。手術操作4日目以降より疼痛閾値の測定を行った。機械刺激:von Freyフィラメントを使用し、足低に触刺激を加え触覚閾値の変動を測定した。マイクロダイアリシスカテーテルの髄腔内装着:ペントバルビタール麻酔下実験を行った。腰椎L5の背側面を開放し棘突起を除去した。髄腔内灌流を行うためマイクロダイアリシスカテーテル(シンクル脊髄用カテーアル:マーシル社製、MS-0045)の先端を脊髄の腰膨大部(L4〜L5)に到達させるように、L5の部位から吻側へ約2.5cm挿入した。チューブの他方は皮下を通して頸部に開放しその位置に固定した。灌流実験は、1週間以上置いて行った。髄腔内灌流液中のGluおよびNA量;灌流中こ回収されたGluおよびNA量は、それぞれ高速液体クロマトグラフィ-電気化学検出器(HTEC-500とM500システム:エイコム)と高速液体クロマトグラフィ-電気化学検出器(ECD-300:エイコム)で測定した。 【実験結果及び考察】坐骨神経結紮に伴い、手術後2週から4週にかけて、結紮足で機械刺激に対する閾値の低下が認められた(求心路遮断痛発症動物の作成)。求心路遮断痛発症動物の髄腔内灌流液中では、機械刺激(ピンチング)に対し、正常動物と比べGluおよびNAの有意な遊離量の増加が観察された。これらの結果から、求心路遮断性疼痛の発症・維持にGluのみならずNA神経系が関与することが明らになった。
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