関節リウマチ、歯周病、骨転移性腫瘍では重篤な骨破壊により歩行困難、歯の喪失、骨痛などが生じ、患者のQOLは著しく損なわれる。骨破壊を起こす唯一の細胞である破骨細胞は造血幹細胞に由来し、分化誘導因子や受容体を免疫・炎症細胞と共有するため、炎症性骨破壊の病態は極めて複雑である。このように複数の細胞種が相互に関連する病的骨破壊の病態を解明し、既存の治療薬とは異なるメカニズムで骨吸収を抑制する新規治療薬を開発することを目的として、主にin vivo imaging手法による研究を行った。本年度の研究から得られた成果は以下の通りである。1、炎症性骨破壊を起こしたマウスにLucTgラット由来の破骨前駆細胞を尾静注したところ、1週間以内に炎症部位に発光が観察され、頭蓋骨は吸収されていた。2、GFPTgラット由来の破骨前駆細胞を用いて同様の実験を行い、in vivo顕微鏡で麻酔下のマウスにおける蛍光分子の分布について検討した。その結果、生きているマウスの頭蓋骨において、複数の核をもっGFP陽性細胞、すなわち移入した前駆細胞から分化した破骨細胞を観察することができた。3、GFPTgラット由来の破骨前駆細胞を移入したマウスから得られた頭蓋骨の非脱灰凍結切片を作製し、抗GFP抗体、アクチン線維および核染色した後、共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果、骨吸収窩と一致する部位にGFP陽性の多核破骨細胞が局在することを確認することができた。4、以上の結果から、循環血中に存在する破骨細胞前駆細胞が骨破壊部位にリクルートされたのち成熟破骨細胞に分化し、さらに活性化され骨吸収を起こすことが示された。
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