研究概要 |
破骨細胞は造血幹細胞に由来し、分化誘導因子や受容体を免疫・炎症細胞と共有するため、炎症性骨破壊の病態は極めて複雑である。このように複数の細胞種が相互に関連する病的骨破壊の病態を解明するためin vivo imaging手法により実験を行った結果、以下の結論が得られた。(1) 炎症性骨破壊を起こしたマウスにLuc-Tgラット由来の破骨前駆細胞を尾静注したところ、3日以内に炎症部位に発光が観察され、5日後に頭蓋骨は吸収されていた。実験終了時に炎症皮膚を除去して発光観察した結果、Luc陽性細胞は頭蓋骨に分布することが確認された。(2) 頭蓋骨ではluciferaseとrat TRAP遺伝子の発現が認められたことから、炎症局所への前駆細胞のリクルートおよび成熟破骨細胞への分化が証明された。この過程は現在開発中の新規治療薬により顕著に抑制されたことから、この治療薬は破骨前駆細胞の遊走抑制作用をもつことが明らかになった。また、遺伝子解析の結果から、炎症性骨破壊モデルマウスでは骨吸収マーカー(TRAP,cathepsinK, MMP9)の他にTNFalpha, IL-1beta, IL-6, MCP-1, MIPlalphaが増加していた。(3) EGFP-Tgラット由来の破骨前駆細胞を用いて同様の実験を行い、in vivo顕微鏡で麻酔下のマウスにおける蛍光分子の分布について検討した。その結果、生きているマウスの頭蓋骨において、複数の核をもつEGFP陽性細胞、すなわち移入した前駆細胞から分化した破骨細胞を観察することができた。(4) EGFP-Tgラット由来の破骨前駆細胞を移入したマウスから得られた頭蓋骨から非脱灰凍結切片を作製し、抗GFP抗体、アクチン線維および核染色した後、共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果、骨吸収窩と一致する部位にEGFP陽性の多核破骨細胞が局在することを確認することができた。
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