研究概要 |
下顎・口唇・頬の協調運動を制御する神経機の解析を調べる目的で、幼弱ラットの矢状断脳幹スライス標本を用いて、顔面神経核と三叉神経運動核へ同時に出力を送る部位を光学的電位測定法を用いて検索した。実験には生後0-5日齢(P0-5)のWistar系ラットの脳幹からマイクロスライサーを用いて矢状断脳幹スライス標本を作成し、膜電位感受性色素(Di-4-ANEPPS)で染色した後、顔面神経核と三叉神経運動核の間および周囲のさまざまな領域を電気刺激し、顔面神経核と三叉神経運動核の両方に興奮性光学応答が誘発されるかを正立顕微鏡に設置した光学的電位測定装置(MiCAM Ultima, Brain Vision, Tsukuba, Japan)を用いて観察した。その結果、顔面神経核の吻背側部の網様体の電気刺激で、3-6msの潜時で顔面神経核と三叉神経運動核に興奮性光学応答が誘発された。両部位における応答は、グルタミン酸受容体拮抗薬のCNQXとAPV、GABA受容体拮抗薬のSR95531およびグリシン受容体拮抗薬のストリキニン投与で著しく減弱した。さらにテトロドトキシンを投与すると、両部位の光学応答は完全に消失した。以上の結果から、顔面神経核の吻背側部の網様体には顔面神経核と三叉神経運動核に出力を送るプレモーターニューロンが存在することが示唆された。
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