研究概要 |
本研究は、分子レベルの相互作用から唾液腺における開口分泌の制御機構を明らかにすることを目的としている。本年度は酵母の開口分泌に関与するExocystと呼ばれる基本タンパク質群の一部が耳下腺腺房細胞に発現していることを明らかにした。これまでに明らかになっているものとして、酵母のSec1に相当するMunc18、Sec4に相当するRabファミリー、Sec9に相当するSNAP-23などがある。今回、耳下腺腺房細胞におけるSec6およびSec8および他のExocystの発現や複合体、複合体形成時期、開口分泌への関与を調べた。さらにRab27のGTPase活性化因子(GAP)について耳下腺腺房細胞の開口分泌に関与しているかを検討した。その結果、ラット耳下腺腺房細胞にはrSec6, rSec8, Exo70, rSec311, rSec5, rSec10, rSec15, Exo84およびRab-GAPであるEPI64が発現していた。一方、細胞分画後Western BlottingによりSec6およびSec8の細胞内局在を調べた結果、両方とも尖端膜画分にバンドを認めた。また、細胞ライセート中にSec6/Sec8複合体を確認し、細胞に開口分泌を誘導するイソプロテレノールで刺激すると、刺激5分後でSec6/Sec8複合体が増加し、30分後で減少した。耳下腺腺房細胞には特異的なExocystが発現しており、Sec6とSec8が複合体の形を経て、開口分泌に関わっていることが示唆された。さらにSec6のC末タンパク質を抗原とする抗体を細胞内に導入するとアミラーゼ分泌が抑制されることより、Sec6のC末端が開口分泌に関わっていることが示唆された。
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