研究概要 |
歯髄細胞は、多分化能を有する可能性があり,さらに脱落乳歯や智歯,抜去歯などから採取可能であるため,再生医学において有望な材料である.本研究は,歯髄細胞を用いた再生医療の実現を最終目標とし,1.歯髄細胞の特性の分子生物学的解析,2.歯髄細胞の培養条件の至適化,および3.歯髄細胞の生体移植による硬組織再生能の検討,を行うことを計画した.(1)と(2)については、平成20年度に実施した。(1)については、平成20年度の成果に引き続き平成21年度において、さらに歯髄細胞特異的な遺伝子の機能解析も行った。平成21年度は、このほか新たに(3)を行った。具体的には、20年度に確立したマウス培養歯髄細胞をgelfoamとcell matrix type I-Aをキャリアとして、重度免疫不全マウス(NOGマウス)の筋膜下に移植した。そして3週間後と2ヵ月後に移植片を取り出し、硬組織(骨,象牙質,セメント質)の再生を検討した.3週間後には軟X線撮影により硬組織に特徴的な不透過像を認め、組織学的な解析により硬組織特異的に存在する破骨細胞の存在も確認した。2ヵ月後には、2種類の硬組織が形成され、一つは骨髄を伴った完全な骨であったが、もう一方は骨より細胞成分が少なく硬い石灰化組織がであった。この組織が象牙質やセメント質に特有のタンパク質を発現しているか否かについては、今後の検討課題である。以上、平成21年度は計画通り進行し、本研究により確立した培養歯髄細胞を用いて、硬組織を再生することに成功した。
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