研究概要 |
骨代謝が交感神経によって制御されている可能性が最近注目されている。一方、組織学的研究は骨代謝に概日リズムが存在することを古くから示している。交感神経およびコルチゾールも概日リズムを持つことから、骨代謝の概日リズムにおいて交感神経およびグルココルチコイドによる時計遺伝子発現制御との関連が示唆される。本研究の目的として、アドレナリン受容体およびグルココルチコイド受容体への薬理学的な刺激による時計遺伝子の発振と概日リズムの誘導を調べ、骨芽細胞におけるアドレナリン作動薬およびグルココルチコイドによる時計遺伝子発現機序と生理機能への関与を検討する。本年度は、マウス骨芽細胞としてMC3T3-E1細胞を用い、アドレナリン(αおよびβ-アドレナリン受容体刺激)、フェニレフリン(α-アドレナリン受容体刺激)、イソプレナリン(β-アドレナリン受容体刺激)を2時間刺激後、RNAを4時間毎に48時間まで回収し、リアルタイムRT-PCR法により、時計遺伝子であるperiod1,2,3およびBmal1, clockのmRNA発現量を比較した。結果として、アドレナリン投与において最初の2時間でperiod1の一過性の上昇、遅れてBmal1の上昇、20時間後のperiod1,2,3の再上昇という時計遺伝子の発振が認められた。しかしclockのmRNA量の変化はみられなかった。その他の薬物についても、同様の結果が得られた。さらにperiodの発現誘導に重要と言われているCREBのリン酸化による活性を調べたところ、αおよびβ-アドレナリン受容体刺激ともに活性化の増大がみられた。以上の結果から、交感神経は、骨芽細胞においてCREBを介して時計遺伝子発現を制御していることが示唆された。現在、グルココルチコイドにおいても同様に検討中である。今後、骨代謝にかかわる遺伝子の発現との関わりを調べており、時計遺伝子と骨代謝の関連を明らかにしていく予定である。
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