研究概要 |
骨代謝が交感神経系により制御されている可能性をin vivoおよびin vitroの実験により示しているが、骨代謝における概日リズムの存在は組織学的研究により古くから示されている。近年、概日時計の中枢が視床下部の視交叉上核に存在し、この中枢時間情報が末梢臓器の末梢時計に交感神経系および副腎を介して伝達されることが示唆されている。本年度では、アドレナリン受容体およびグルココルチコイド受容体への薬理学的な刺激によるヒト骨芽細胞における時計遺伝子の発振の軽時的変動を解析した。すなわち、イソプレナリン(1μM)、デキサメタゾン(1μM)あるいは50%血清にて2時間処理したSaM-1細胞におけるhPER1,hPER2,hPER3,hBMAL1,hCLOCKの発現をReal-Time PCR法にて2-4時間毎に32時間まで測定した。その結果、イソプレナリン、デキサメタゾン、50%血清はいずれも、hPER1の処理2時間後における急激な上昇と20-24時間後の上昇、hBMAL1の12-16時間後の上昇が確認された。50%血清はhPER2の処理2時間後に上昇を認めたが、イソプレナリン、デキサメタゾンはこの上昇を示さず、処理20-24時間後における上昇のみを示した。hPER1のデキサメタゾン処理による上昇とイソプレナリンおよび50%血清の上昇には2-4時間のタイムラグが認められた。また、これの処理はhCLOCKの変動を示さなかった。以上の結果より、ヒト骨芽細胞のβ-受容体とグルココルチコイド受容体活動が時計遺伝子の振幅に関与していることを示している。
|