研究概要 |
骨代謝は概日リズムを形成しているが、交感神経により制御されている事も知られている。概日時計の中枢は視床下部の視交叉上核に存在し、この中枢時間情報が末梢臓器の末梢時計に交感神経系および副腎を介して伝達されることが示されている。本年度は、アドレナリン受容体およびグルココルチコイド受容体への薬理学的な刺激による時計遺伝子と骨代謝関連遺伝子の発振の経時的変動を解析した。ヒト骨芽細胞(SaM-1)において、イソプレナリン(1μM)、デキサメタゾン(0.1μM)の処理は時計遺伝子を発振し、hPER1は処理2時間後における急激な上昇と20-24時間後の上昇、hBMAL1は12-16時間後の上昇を示した。両者の発振には僅かなズレが観られ、hPER1の上昇には2-4時間のタイムラグがみられた。このイソプレナリンやデキサメタゾンの処理は、時計遺伝子の発振と同様に、骨関連遺伝子のType1 collagenやALPを発振した。発振された位相のピークは相反していた。また、SaM-1と同様に、ヒト骨肉腫由来骨の芽細胞様細胞(MG-63)においてもイソプレナリン、デキサメタゾンの処理により時計遺伝子の発振がみられ、腫瘍細胞でも時計遺伝子が正常に制御されていた。In vivoにおいて骨代謝の概日リズムを明らかにするため、12時間の明暗サイクルで維持したマウスにおける骨の時計遺伝子、骨代謝関連遺伝子を解析したところ、骨組織における時計遺伝子(PER1, BMAL)および骨関連遺伝子(NFAT, Cathepsin K, Type1 collagen, Runx2)の発現にリズミカルな発振が認められた。現在、これらの発振が交感神経を持続的に亢進させたマウスおよび交感神経や感覚神経を除去したマウスで検討している。本研究により、骨代謝における概日リズム制御に神経系の役割を分子レベルで示唆したが、今後、時計遺伝子と骨代謝関連遺伝子や細胞増殖に関わる肝細胞増殖因子等の成長因子の遺伝子発現との関わりを解明したい。
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