研究概要 |
歯原性上皮の腫瘍化や細胞分化における歯の発生プログラム制御因子の影響を解明するため、幹細胞の関連分子であるCD133,Bmi-1,ABCG2について検索した。 1.方法:エナメル上皮腫47例(濾胞型26例、叢状型21例;棘細胞腫亜型12例、顆粒細胞亜型7例を含む)、悪性エナメル上皮性腫瘍6例と対照の歯胚12例を用い、CD133,Bmi-1,ABCG2の発現についてRT-PCR法および免疫組織化学により解析した。 2.RT-PCR法の結果:全ての歯原性組織においてCD133,Bmi-1,ABCG2のmRNA発現が認められた。 3.免疫組織化学の結果:CD133とBmi-1は、歯胚・エナメル上皮腫・転移性エナメル上皮腫では基底膜近傍の上皮性細胞に反応し、エナメル上皮癌・明細胞性歯原性癌では殆どの腫瘍細胞に陽性だった。CD133の発現は、悪性エナメル上皮性腫瘍で歯胚・エナメル上皮腫より有意に高かった。ABCG2は、歯胚の上皮成分には反応がみられず、エナメル上皮性腫瘍のいくつかの症例において腫瘍細胞が陽性を示した。また、顆粒細胞亜型のエナメル上皮腫では顆粒を有する腫瘍細胞に陽性を示す症例があった。ABCG2の発現は、悪性エナメル上皮性腫瘍で歯胚より有意に高かった。 4.考察:歯胚・エナメル上皮腫性腫瘍におけるCD133,Bmi-1,ABCG2醗現より、これらの幹細胞関連分子が歯原性上皮の細胞分比や増殖の制御に関わることが示唆された。
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