骨肉腫は、骨に発生する悪性腫瘍の中では最も頻度が高く、10代に好発し小児悪性腫瘍の約5%を占める。治療成績は集学的治療の進歩により飛躍的に向上したが、肺転移を生じた症例では今なお予後不良である。我々が発見した新規蛋白"℃artducin(カートデューシン)"は成長板軟骨の増殖軟骨細胞から分泌され、成長因子として内軟骨性骨化における骨格の形成・成長を調節する重要な役割を果たしていることが知られている。カートデューシン遺伝子はヒト第5染色体のp13.1-13.2領域に位置し、骨肉腫において染色体DNAの異常増幅が指摘されている第5染色体のp13-14領域内に含まれることが分かっている。本研究課題の目的は、いままで解明されていないカートデューシンの骨系腫瘍における病態学的な役割を明らかにすることである。骨肉腫の肺転移は血行性に生じることから、今年度はカートデューシンの血管系細胞に対する作用の解析を行った。カートデューシンが血管内皮細胞の増殖と遊走を促進することはすでに我々が報告しているが、血管壁を構成する血管平滑筋細胞に対してはERK1/2およびp38-MAPKシグナル伝達経路を介して増殖のみを促進することが明らかになった。また、骨肉腫中に多く存在するTGF-betaが血管平滑筋細胞においてカートデューシン遺伝子の発現を誘導することが明らかになった。以上より、骨肉腫腫瘍細胞から産生・分泌されたカートデューシンが腫瘍内の血管新生を促進することにより血行性転移形成にも関わっている可能性が示唆された。
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