研究概要 |
1.メダカに対してガンマ線,炭素粒子線の照射を行い,照射後の咽頭歯骨部における破骨細胞を特異的に染色するTRAP染色を行い検討した。 咽頭歯骨の咽頭歯周辺部の破骨細胞はガンマ線照射によって増加する傾向を示し,対照的に炭素粒子線照射によって減少した。異なる放射線照射によって,メダカ咽頭歯骨の反応が異なることが確認された。炭素粒子線はガンマ線に比べて破骨細胞の誘導を抑制して骨吸収を低くする可能性が示唆された。 2.メダカの全遺伝子はヒトを初めとする哺乳類との同相性が指摘されている。マウス等の抗体を用いて放射線照射メダカの咽頭歯骨の切片を作製して,各種骨代謝因子の発現と分布を検証するために,免疫染色を施した。 ガンマ線照射によって咽頭歯周辺において破骨細胞の誘導因子であるRANKLの発現が増強された。これとは対照的に炭素粒子線照射されたメダカにおいてはRANKLの拮抗因子であるOPGの発現が強化され,対照的な応答が示された。炭素線照射で破骨細胞の誘導が抑制される要因としてRANKLの抑制とOPGの高発現が要因である可能性が示唆された。 重粒子線がん治療において骨組織の反応が従来のガンマ線照射と異なることが指摘されてきたが,ガンマ線と炭素粒子線のようにLETの違う放射線によって骨組織における骨代謝因子や骨芽細胞の成熟と分化における反応が異なることが示された。また,メダカを用いた研究が放射線の生体骨組織におよぼす影響を調査する上で有用であることが示された。
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