研究概要 |
本年度の実地計画予定は食物認知の脳内ネットワークの解明で,前年度のデータと今年度の取得したデータを新規に購入したコンピュータを用いてより深い解析をおこなった。 課題は視覚提示による食物と非食物の鑑別として,単語(ひらがな:3文字)と絵(イラスト:3D空間認知機能が賦活されにくい)をアトランダムに提示する2X2のブロック課題を用いた。対象は検査を行った18人なから,14人を選択した。除外例は検査時雑音が多かった3人と課題提示で単語のみ反応を示さなかった1人である。各課題における誘発脳磁場の部位を周波数・時間別の信号源推定に,sLORETA法を用いた。各課題における事象関連脱同期(ERD)を各周波数別に最小のERDをセンサー投射にて,大脳表面に投射して視覚的に判断した。誘発脳磁場の部位は視覚野の賦活後,主に0.2秒から0.5秒の問で視覚経路が優位になり,単語では腹側路が多い結果となった。絵提示でも予想に反して,約半数で腹側路が賦活した。 事象関連脱同期は,β帯域の左側上側頭回後端領域で食物の単語と絵提示の両方で優位になった。この領域は言語の認知に関与するWernicke領域でもあり,食物である認知は生物の生存に関与することも考慮すると,食物認知はメタ言語と関連がある可能性を示唆した。この点においては,認知障害患者の現在の嚥下リハビリテーション法を変える必要性を示唆していると思われる。 一方で,β帯域の左側上側頭回後端領域で事象関連脱同期を強く示した3人と,反応が弱い3人について拡散MRIを用いて,視覚野から左側上側頭回後端領域までの神経路の描出を行った。結果は,神経束の太さに優位差がなかった。今後,この点についての検討を行う必要がある。
|