[目的]本研究の目的は、構造化レポーティングを用いて、コンピュータ支援診断システムを開発し、顎関節症の診断におけるその有用性を検討することである。 [材料と方法]徳島大学病院において、2008年に顎関節症の疑いで顎関節1.5T-MR検査を行った138症例の画像診断レポートを材料とし、1. RDC/TMDに準じで、構造化した画像診断レポートに入力する「所見」および「診断」の各項目を決定した。2.診断推定を行なうために、138症例の画像診断レポートに自由記載されたテキストデータの「所見」および「診断」の項目を抽出し、それらを構造化し、標本とした。3.「所見」および「診断」の各項目との相関関係について、標本を単回帰分析し、骨変化、関節円板の位置の「診断」項目ごとに有意な相関関係にある「所見」項目を算出した。それらの「所見」、回帰分析結果、標本を用い、ベイズ推定により、「診断」を算出した。その結果を、ナイーブベイズ推定、ベイジアンネットワークの結果と比較する。4. 2007年に顎関節症の疑いで顎関節1.5T-MR検査を行った158症例について、2008年のデータに基づいて、MR「所見」を入力した際の「診断」のベイズ推定を3方式で比較した。 [結果および考察]骨変化と円板偏位の分析における3方式による「診断」結果を比較すると、ベイジアンネットワークでのみ、1側の誤答であった。さらに、2007年に顎関節1.5T-MR検査を行った158症例について、2008年のデータに基づいて、3方式を比較するとナイーブベイズ推定、ベイジアンネットワークでは、それぞれ2側、4側が誤答となったが、単回帰分析+ベイズ推定では、100%の正答率であった。 [結論]構造化レポーティングを用いて、単回帰分析とベイズ推定の組み合わせたコンピュータ支援診断システムは、顎関節部の骨変化、関節円板の偏位について、高い確率の診断精度が得られ、顎関節症の診断に有用であった。
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