1)口腔扁平上皮癌細胞株MOK205の細胞集塊(MCA)のラミニン5表面での上皮間葉移行Epithelial-mesenchymal transition (EMT)(MCAがmonnolayerに変わり、さらに細胞分散cell scatterringを生じる現象)はScr familyチロシンキナーゼ拮抗剤(PP1)により完全に抑制された。さらにEMTの過程で、Tyr215リン酸化SrcとTyr529リン酸化Srcが細胞間接着に強く発現していた。これらの所見から、SrcのTyr215とTyr529のリン酸化がEMTの進行に関与することがわかった。 2)MOK205は足場のない浮遊培養下ではMCAを形成することでanoikisを回避し、生存することができた。MCA形成によるanoikis回避機序を解析するため、抗Eカドヘリン機能抑制抗体で細胞間接着を阻害したところ、アポトーシス関連タンパクの発現変化を認め、Eカドヘリン機能の活性化が足場非依存性survivalに関わることが示唆された。さらにカドヘリン機能阻害に関わるカドヘリンシグナルの下流分子を探索した。 3)口腔癌原発病巣におけるSrcチロシンキナーゼの機能阻害による浸潤抑制、脈管を経由して転移臓器への移動過程における足場非依存性survivalの阻害による転移抑制に基づく新たな口腔癌治療戦略を考察した。
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