研究概要 |
近年、肥満と大腸がんなどの各種臓器におけるがん発生との関連が指摘されている。しかし、肥満と口腔がん発症の関連を検討した報告は極めて少ない。しかも最近相反するデータが報告された(関連なし:Int J Epidemiol.37:990-1004,2008;関連あり:Int J Obes30:359-63,2006)。そこで本研究では肥満と口腔がんの関連性について実験的に検証するため、肥満マウスを使用した動物実験を行った。使用した動物は、雄性のob/obマウス、db/dbマウス、C57NL/6J (Wt)マウスで、それぞれ口腔(舌)発がん物質4-NQO (20ppm)を2、4ないし8週間飲水投与し、実験開始後20週で犠牲死させて病理組織学的解析を行った。 その結果、マウス当たりの舌増殖性病変(異形成+乳頭腫+扁平上皮がん)の発生個数は、4-NQO投与期間に関わらずdb/db>ob/ob>Wtとdb/dbマウスで高値を示した:4-NQO2週間投与でdb/db (6.25±1.50)>ob/ob(2.50±1.73)>Wt(2.25±0.96);4-NQO4週間投与でdb/db(10.00±0.82)>ob/ob(5.00±1.15)>Wt(4.75±1.50);4-NQO8週間投与でdb/db(13.00±4.32)>ob/ob(10.50±1.73)>Wt(6.50±1.73)。一方、4-NQO投与では食道腫瘍も発生し、同様に4-NQO投与期間に関わらずdb/dbマウスで高値であった。 これらの結果から、肥満マウスは4-NQO誘発舌・食道発がんに高感受性であり、肥満と舌がん及び食道がん発症との関連性が示唆された。現在、その機構についてサイトカイン発現に焦点を絞って解析しているところである。
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