肥満の舌発がんに及ぼす影響について4-NQO誘発舌発がんモデルを使用して、雄性db/dbマウス、ob/obマウス、wild type(WT)マウス(C57BL/6J)にて検討した前年度の実験結果から、肥満マウスでは4-NQO誘発舌発がんに高感受性であり、肥満は舌発がんに対してリスクが高いことが判明した。その感受性はob/obマウスに比べ、db/dbマウスに高かった。この結果を踏まえ、db/dbマウスに発生した舌扁平上皮がんにおける各種の前炎症性サイトカイン(IL-1alpha、IL-1beta、IL-4、IL-6、IL-8、TNF-alpha)及びNF-kappaB、Stat3、Nrf2の発現を免疫組織学的に検討し、wild type(WT)マウス(C57BL/6J)に発生した扁平上皮がんにおける発現と比較した。また、その結果を保存していたがん組織を使用してマウスcDNA plate array(Signos)にて検証した。その結果、db/dbマウスに発生した舌扁平上皮がんでは、IL-1alpha、IL-1beta、IL-4、IL-6、IL-8、TNF-alphaの発現スコアがWTマウスのそれに比較して有意(p<0.05~p<0.01)に高かったが、NF-kappaB、Stat3、Nrf2の発現には有意な差を認めなかった。この前炎症性サイトカインのがん部における免疫組織学的発現の結果は、cDNA plate arrayを用いた解析で確認することができた。これらの結果から、肥満における舌がん高感受性は前炎症性サイトカインの高発現によることが示唆された。現在、舌前がん性病変におけるこれら前炎症性サイトカインの発現解析を免疫組織学的に、またマウスcDNA plate arrayを用いて実施しているところである。本年度の成果から、さらなる解析を必要とするが、口腔粘膜組織中や唾液中の炎症性サイトカイン値などは、舌がんを含む口腔がん発症のリスクを評価するためのバイオマーカーとなり得るものと期待される。
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