研究概要 |
前年度までに、口腔扁平苔癬病変部に浸潤するTリンパ球に関する解析として、(1)TCRレパトア解析、(2)病変部のサイトカイン発現量解析、および(3)Epidermal Growth Factor Receptor (EGFR) familyと各リガンドを介したシグナル伝達機構の遺伝子発現解析を予定通りに終了した。本年度は、(1)TCRレパトア解析の結果から口腔扁平苔癬病変部に浸潤するTリンパ球はスーパー抗原の関与が示唆されている事から、如何なるスーパー抗原が病態に関わっているかを同定し、さらに組織検体中のスーパー抗原タンパク質の検出を免疫組織染色により実施する。(2)口腔扁平苔癬病変部の免疫状態をサイトカイン発現プロファイルおよび臨床症状を包括的に検討した結果、CD4陽性T細胞の優位な浸潤とIL-5, TNFαの発現増加が確認されている。口腔扁平苔癬病変部においてIL-5の増加は報告が無い。IL-5は肥満細胞の生存の重要に関与する可能性があるため、口腔扁平苔癬の炎症プロセスにIL-5を介する肥満細胞の関与を検討する。(3)EGFR-familyと各リガンドを介したシグナル伝達機構の遺伝子発現結果から、受容体ではEGFR、リガンドではAREG, EREG, HB-EGFの高発現が確認された。この結果から、本疾患の病態形成に関わるEGFR-リガンドの関与を免疫染色により詳細に罹患部浸潤T細胞と口腔扁平苔癬組織のケラチノサイトについて同定を実施する。上記したT細胞機能解析とEGFRシグナル伝達の関与を検討することにより、口腔扁平苔癬の総合的病態形成メカニズムの解明および悪性度や癌化率などの新規診断法の開発に端緒を開くことを目的とする。
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