研究概要 |
本研究では、口腔扁平苔癬病変部の組織検体を用いて、(1)病変部に浸潤するTリンパ球のTCRレパトア解析、(2)病変部のサイトカイン発現量解析、および(3)Epidermal Growth Factor Receptor(EGFR)familyと各リガンドを介したシグナル伝達機構の遺伝子発現解析を予定通りに施行し、下記の3つの結果を得ることが出来た。 (1) TCRレパトア解析の結果から口腔扁平苔癬病変部に浸潤するTリンパ球はスーパー抗原の関与が示唆された。(2)口腔扁平苔癬病変部の免疫状態をサイトカイン発現プロファイルおよび臨床症状を包括的に検討した結果、CD4陽性T細胞の優位な浸潤とIL-5,TNFαの発現増加が確認された。 (3) EGFR-familyと各リガンドを介したシグナル伝達機構の遺伝子発現結果から、受容体ではEGFR、リガンドではAREG, EREG, HB-EGFの高発現が確認された。さらに免疫組織学的染色により罹患部浸潤T細胞口腔扁平苔癬組織のケラチノサイトに濃染していることから、本疾患の病態形成にEGFRおよびAREG, EREG, HB-EGFリガンドの関与が示唆される結果となった。上記結果をもとに、2010年12月に国際医学雑誌に論文発表を行っている。 口腔扁平苔癬におけるEGFR familyの網羅的な解析および病態形成との関連性についての報告は本研究が初めてであり、今回得られた研究結果より、EGFR familyが今後の口腔扁平苔癬の診断・治療マーカーとして有用となることが期待されると考えられる。
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