研究概要 |
本研究の目的は、1ステップ型接着システムの溶媒の除去率を変化させ、負荷を加えた後、微小引張り試験、接着界面の超微細構造の観察、修復物周囲の脱灰度の定量、ボンディング層の変色の評価を行うことにより、1ステップ型接着システムの劣化を総合的に評価することである。 平成22年度は、HEMAを含有する1ステップ型接着システム(Easy Bond)とHEMA含有しない1ステップ型接着システム(Beauti Bond, G Bond plus)のair-drying timeを5,10,15,20,25,30,35秒と変化させて作製した接着試料の24時間後の引張り接着強さを評価した。その結果、Easy BondびBeauti Bondでは、15秒、G-Bond Plusでは、25秒が接着強さのピークとなり、短いair-dryingのみならず、長すぎるair-dryingによっても接着力の低下が認められた。SEM観察では、HEMA含有の接着材では、Voidsはほとんど観察されなかったが、HEMAを含有しない材料では、多数観察された。Voidsの数は、air=drying timeによらず、さほど違いはなかった。短いair-drying timeでは、溶媒が残存して接着界面の重合が低かったと考察できる.また長すぎるair-drying timeでは、溶媒の残存が極端に少なくなったことによって、重合度の低下が起こったのか、逆に、重合したボンディング剤が硬化し、脆弱なポリマーが形成されたことにより、容易に破壊されたのか、現時点では相反する考察が可能である。 次年度以降では、同条件で作製した接着試料をサーマルサイクリング、あるいはpHサイクリング後に接着強さを評価するとともに、ボンディング剤の色調安定性に関しての検討を行う予定である。
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