研究課題/領域番号 |
20592219
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中沖 靖子 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (50302881)
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研究分担者 |
佐野 英彦 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (90205998)
野田 守 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (10301889)
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キーワード | 接着界面 / 分子 / 歯質 / レジン / バイオデグラデーション / プラチナナノコロイド |
研究概要 |
本年度は、象牙質バイオデグラデーションに対するプラチナナノコロイドの影響を検討した。これは、当該年度の研究目的の一つである象牙質バイオデグラデーションモデルの確立後のMMPインヒビターとなる物質の効能を検討する実験の一環でもある。この実験では、プラチナナノコロイド水溶液にて処理した象牙質とレジンとを接着させ、その試験片を長期予後の目安となる加速試験に供して接着状態の変化を観察した結果、処理液の濃度を適正に調整すればレジンとの接着界面の劣化がおさえられる可能性が示唆された。ちなみに当初の計画では適切なMMP試薬及び材料試験片の検討を行う予定であったが、その絞り込みは困難であった。 また、接着界面の微細構造の解析に関しては、前年度までの研究により物理的化学的ダメージの少ない有効な手法が確立されたことを、保存学会で発表した。加速電圧1000~1250kVにて試料の中心部の近傍をプローブし、格子像がクリアに確認される約10~30nmの薄層となっている部分を観察し、ここで得られた画像からシミュレーションによる計算像を得て、原子の正確な位置と種類(原子番号)を反映する結晶構造像からそれぞれの原子のポジションを推定する。超高圧電顕による観察は通常のTEMの10倍ないし20倍の非常に高電圧で加速された高速の電子を利用するため、理論的にも実際にも分解能が高く、電子線の試料透過能が高く熱発生や電離が起きにくいので、それに伴う加熱や化学構造の破壊による試料の損傷が少ないという利点を持つ。精密イオン研磨法も発熱の少ない超薄化手段として有用である。 以上の成果から、今後はプラチナナノコロイドの効果を原子レベルで精査することにより、生体と生体材料との分子、原子レベルの関係解析が進むであろう。
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