研究概要 |
バイオフィルム制御に抗菌成分を用いる場合、その浸透性能は物質のチャージ、親水・疎水性のバランス、菌体外マトリックスへの感受性などに影響を受けバイオフィルム深層部への浸透に数十秒から数分要するため、より浸透性のよいものを選択する必要がある。本年は、バイオフィルム深層部への優れた浸透拡散性能を有する物質を探索するため、物質の分子量とチャージの与える影響について検索した。 キャピラリーバイオフィルムリアクター内部に形成させた同一のバイオフィルムに対し、蛍光標識したアニオン性多糖類(Dextran conjugate fluorescein, 3K, 10K, 40K, 70K)および陽イオン性化合物(グルコン酸クロルヘキシジン)をそれぞれ送り込み、中心部に到達するまでの時間あるいは中心部の細菌が死菌と判断されるまでの時間を共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し、MetaMorph softwareを用いて計測した。バイオフィルム中心部に到達するまでの時間は、バイオフィルム内外部の蛍光量の比が平衡状態となった時間の90%に達するまでの時間(T90)を算出した。 アニオン性の分子量3000以下の高分子化合物は、直径150μmのバイオフィルムの中心部におよそ12秒以内に浸透した。一方、CHXは直径75-111μmの人工バイオフィルムにおいてCaiceinの流出により殺菌されたと判断された時間は、約7分であった。CHXの分子量は約897であり、アニオン性化合物の浸透時間(12秒)より著しく延長された。これらのことから、バイオフィルムへの浸透は分子量より物質のもつチャージに大きく影響を受けると考えられた。
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