研究概要 |
本研究では、ポリフェノール類の一種であるカテキンに着目し、歯髄保存療法の一端を担う新しい治療法として、カテキンを歯髄炎病変部に応用する方法を検討した。まず、ヒト培養歯髄細胞を用いて、Toll-like receptor(TLR)リガンドを中心とした自然免疫反応に関与する因子による刺激を行ったときの成長因子やサイトカイン発現に対するカテキン(エピガロカテキン3ガレート(EGCG)およびエピカテキンガレート(ECG))の影響について検討したところ、vascular endothelial growth factor, IL-8, IL-6やシクロオキシゲナーゼー2(COX-2)のmRNAならびにタンパク発現は、EGCGおよびECGのいずれのカテキンにおいても濃度依存的に有意に減少した。また、接着分子発現についてフローサイトメトリー解析したところ、ICAM-1およびVCAM-1発現はカテキン濃度依存的に有意に減少していた。さらに、う蝕関連細菌であるStreptococcus mutans,Streptococcus sanguinisにて歯髄細胞を刺激したときのIL-8産生もカテキンは抑制した。一方、石灰化誘導培地を用いて歯髄細胞を象牙牙細胞様細胞に分化させた細胞に対しTLRリガンド刺激したときのIL-8産生や、単球系cell lineであるTHP-1細胞に対しTLRリガンド刺激したときのCOX-2発現について、カテキンの影響を検討したところ、カテキンはこれらの産生・発現を抑制させた。これらの結果より、カテキンが有している抗炎症効果は歯髄に対しても有効であることが示され、歯髄炎の治療に応用できる可能性があることが示唆された。
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