研究概要 |
歯頸部コンポジットレジン修復に関するランダム化比較試験の成果を国際学会(87^<th> IADR,#3246,Miami,2009)で発表し、これをまとめた論文が学術雑誌(J Dent,38,191-200,2010)に掲載された。また、コンポジットレジン修復の長期臨床成績に関するレビュー(執筆依頼)をJDSRに投稿した。 「MI(Minimal Intervention)を理念としたエビデンス(根拠)とコンセンサス(合意)に基づくう蝕治療ガイドライン」と「保存クリニカルガイド第2版」の出版に携わった。さらに、再修復の理由となる二次う蝕、辺縁着色、辺縁破折ならびにう蝕のモニタリング成果の一部を発表(日本歯科評論69(9),67-76,2009)した。次年度は、これを用いて意思決定に及ぼす生涯学習の影響について調査を行う計画である。 長崎大学歯学部同窓会会員から卒業年度ごとに20名を無作為に抽出し(計500名)、う蝕の進行程度に基づいた修復処置の介入時期、う蝕への対処法、修復物に関連する問題点への対処法に関するアンケート調査を行い、以下の仮説について検証した。仮説1:情報(患者の年齢、う蝕リスク、修復物の経過年数)の有無は修復治療の意思決定や再修復の判定に影響を及ぼす。仮説2:術者の背景(臨床経験、勤務形態、給与、医院経営、専門領域)は意思決定に影響を及ぼす。ロジスティック回帰分析を用いてデータ(回収率37%)解析を行った結果、再修復の意思決定に影響を及ぼしている要因として臨床経験と患者数が挙げられる症例が多く見られた。すなわち、臨床経験が浅く(10年未満)、患者数が多い(30人以上)と、再修復処置を選択する傾向にあった。さらに、全症例において情報がないと再修復する頻度が高くなった。また、定期管理が十分に行われていない診療環境では、脱落や摩耗症例はより積極的に修復されることも判明した。
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