研究課題
本研究課題は、ヒト歯髄幹細胞の増殖および分化に対する洗浄血小板中の自己由来増殖因子の効果を明らかにする事により、安全で効果的な歯髄組織保存再生療法を確立する事を目的としている。自己由来増殖因子による歯髄細胞の増殖促進効果および石灰化促進効果は、洗浄血小板中の増殖因子の中でも、TGF-β、 及び、TGF-βスーパファミリーに属するBMP-2に大きく依存する事が平成20年度、平成21年度までの研究により明らかになっている。ヒト歯髄細胞に対するTGF-β、 BMP-2の作用の差異を検討したところ、同細胞の初期増殖は、洗浄血小板中の増殖因子のTGF-β刺激により産生されたプロスタグランディンE2に大きく依存する事。さらに、同細胞のオステオカルシン遺伝子の発現と石灰化は、BMP-2により有意に促進されることが明らかとなった。このように、洗浄血小板中の増殖因子による刺激により形成された、複雑なサイトカインネットワークにより、ヒト歯髄細胞の増殖と分化という、相反する作用が観察される事が明らかとなった。また、形成された石灰化ノデュールを原子吸光により解析したところ、骨に近い組成を示し、骨様の石灰化である可能性が示唆された。そこで、セルソーターにより、c-kit+/CD34+/CD45-ヒト歯髄細胞から歯髄幹細胞を分取し、この歯髄幹細胞の増殖・分化に与える、洗浄血小板中の増殖因子の効果を詳細に検討したが、増殖促進効果、石灰化促進効果共に弱いものであった。上記増殖因子による、ヒト歯髄細胞の著しい増殖・石灰化促進効果は、c-kit+/CD34+/CD45-細胞以外の、他の細胞との協調作用が必要とされるものであることが示唆された。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
In Vivo
巻: 25(1) ページ: 93-98
Journal of Oral Science
巻: 53(1) ページ: 67-75