非定型的な歯痛として認識される症例を分類し、初診時にいわゆる非定型歯痛が疑われたものの中から非定型歯痛ではない明確な歯科的原因を持っていた疾患を鑑別抽出する方法を考案した。具体的には、通常の根管治療で治癒しない症例のうち慢性的な疼痛愁訴が認められる症例を抽出した。その後歯牙の器質的欠陥あるいは医原生の創傷が無い症例を分別するために、歯科用実体顕微鏡と接続するDVDモニターで記録した画像を用いて髄床底(根管口を含む)の状態を観察した。エックス線写真を用いて明確な根尖部歯槽骨の吸収が認められる症例は除外して、残った症例を非定型歯痛の候補として残した。一方、歯髄炎の温度診断に関する研究を行った。これは研究を始めるにあたり予定に入れていなかったものだが、正常な歯髄の温度反応の特徴を知った上で、上記費定型歯痛を持つと疑われる患者の健全生活歯で差異がでるかどうかを確認するためである。この枝分かれ研究については20年度中に論文にして公表した。 後ろ向き統計研究を実行中である。これは当研究者が勤務する大学付属病院の歯内治療科にて過去2年間に非定型歯痛を疑う症例を抽出する作業である。これについてはまだ完結していない。ダマスカス大学アル・ティナウィ教授に委託しているダマスカス大学における後ろ向き研究については、同様にカルテから抽出している途中であるが、国際的な新型インフルエンザ蔓延とアラブ地域の政治的緊張のため木下が17回シリア歯学会に参加しなかったため、少々頓挫しているが、メール交換を主な連絡方法として鋭意研究成果を収集している。21年度の研究予定は、上記の計画のうち遅れている後ろ向き研究を急ぎ、その上で非定型歯痛と精神疾患の関連を考察する。その上で非定型歯痛のタイプ分けができると想定し、性別・年齢・職業(もしくは有閑度)、居住地域などの基本的事項をプロファイリングする。
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