本研究を申請した段階から約2年半の時日が経過したが国際政治情勢の変化があったため、この研究の一方の主要部分として予定していたシリア国立歯学部小児歯科の協力が得にくい状況となった。そこで、当初の研究内容を修正する必要が生じたため、新たにin-vitro実験を追加した。生活に支障をきたす不明痛を訴える歯牙を抜去して健全歯との間に物理的な差異がないかを調べる(特に根尖口の形態、側枝の有無、歯根膜の性状と形態)ために、t-ブタノール凍結乾燥器を購入する必要が生じた。 この計画変更を前提として以下の実験を行った。すなわちin-vivo実験として、抜去歯に人工的な垂直性歯根破折をつくり、メチレンブルー溶解液を塗布したものとしないもの、各種濃度のアルコール溶液で希釈したものを合計10グループとして編成し、DIAGNOdentを用いてレーザー光の吸収率を測定した。その結果をMann-Whitney U testで統計学的に文益した。その結果、メチレンブルー溶解液が0.1%または1.0%ポリエチレン・オクチルフェニル・エーテルを用いた場合に、メチレンブルーだけのグループに比べて有意にレーザー光の吸収率が上昇していることがわかった。 この実験のあと、非定型歯痛の原因の一つとして考えられる根管治療後の不完全破折または垂直性亀裂の存在と慢性疹痛との関連について、治療例をデータベースとして検討を行う予定である。
|