研究概要 |
象牙質接着システムの接着耐久性を向上させるために,微量元素によって象牙質の再石灰化を促進させる次世代自己修復型接着システムの開発の一環として,歯質の石灰化に関与する微量元素であるSiに着目した。このSiを含有する自己修復型接着システムとして,フルオロアルミノシリケートガラス粉末の超微細粒子を添加した接着材に着目した。組成としては,アルミノシリケートガラスを主体とするものであり,すでにS-PRG Fillerとして実用化されているものを使用した。このフィラーを,蒸留水あるいは酢酸溶液に浸漬して,その抽出液を採取した。この溶液におけるイオン放出量についてはに関しては,ICP発光分析装置(ICPS-8000,島津製作所)を用いた。また,Fluorideionelectrode(Model9609BN, Orion Research)とpH/ionmeter(Mode 1720A, OrionResearch)とを用いてフッ化物徐放量の測定を行った。 その結果,S-PRGフィラーからは,F以外にBやSrなどのイオンが徐放していた。とくに,Srに関してはFと同等あるいはそれ以上の徐放が認められた。このように,S-PRGフィラー)からFをはじめB,SrあるいはNaなどさまざまなイオンが徐放されることが確認でき,その齲蝕象牙質抑制効果的あるいは再石灰化による歯質強化が期待できるものと考えられた。また,前年度に行った歯質接着試験の結果からも,本フィラーを用いた際には,その接着耐久性にも優れたものであることが確認されている。これもまた,S-PRGフィラーから徐放される各種イオンの効果による歯質強化作用によるものとも考えられた。今後,S-PRGフィラーからのイオン放出によって,齲蝕によって脱灰が及んだ象牙質の再石灰化,あるいはこれを応用した接着材の利用によって,象牙質接合界面の強化に関する詳細の検討を行う予定である。
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