研究概要 |
光重合型レジンは,その重合硬化に伴って体積を変化させる重合収縮という現象を生じる。重合収縮の発生は,修復物と窩壁との間にギャップを形成し,歯髄刺激あるいは二次う蝕の原因となるところから,その重合挙動に関しては検討が続けられている。そこでフィラー含有量の異なる試作レジンを用いて,光線照射初期における重合挙動について,レーザースペックル干渉法およびフィールドエミッション型走査電子顕微鏡(FE-SEM)観察を行うことによって検討した。 試作レジン(松風)としては,フィラー含有量が55.6wt%(SP-1),76.6wt%(SP-2)および80.0wt%(SP-3)の3種類を用いた。照射器としてはOptilux501を,その光強度が100あるいは600mW/cm2になるように調整し,30秒間照射した。 試作レジンのフィラー形状を観察するために,通法に従いその硬化試片を研磨,アルゴンイオンエッチングを行い,次いで金蒸着を施し,FE-SEM観察を行った。 スペックルパターンの測定は,レジンペースト表面から得られたスペックルパターンを照射開始から120秒後まで連続して記録した。 試作レジンのFE-SEM観察像は,SP-1では粒径1~3μmの不定形フィラーの間隙を1μm以下のフィラーが埋めるように充填されていた。SP-3はSP-1と同様なフィラーが充填されていたが,その充填率はSP-1に比較して多く観察された。SP-2においては,粒径5および1μmの不定形フィラーの間隙を,1μm以下のフィラーが埋めるような像を呈していた。 材料間でスペックルパターンの変化を比較すると,SP-1でその移動量が大きいものの,フィラー含有量に関わらずそのパターンに差は認められなかった。これは,光重合型レジンの重合硬化反応の進行には,フィラー含有量による影響は少なく,重合開始剤系の影響の方が大きいことを示すものと考えられた。
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