歯根嚢胞と臨床診断され、外科的に摘出された根尖病巣組織を研究試料とした。 ヘマトキシリン・エオジン重染色を施したところ、重層扁平上皮を含まず、幼弱な血管に富む高度な細胞浸潤を伴う組織を歯根肉芽腫と病理診断し、以下の免疫組織化学的な検索に供した。なお、重層扁平上皮を含む組織を歯根嚢胞と病理診断したが、歯根嚢胞の割合は全体の約17%であった。 歯根肉芽腫の凍結切片からRNAを分離し、ヒトmidkineに特異的なPCRプライマーを用いてreal time PCR法を行ったところ、midkine遺伝子の発現を確認したが、健常歯肉からの発現は認められなかった。そのため、midkineは炎症特異的に発現され、歯根肉芽種の発症に影響している可能性が示唆された。 抗ヒトRAGE、AGE、S100抗体を用いてABC法による免疫染色を行ったところ、その発現は強く、マクロファージ、リンパ球、好中球および血管内皮細胞で発現を認めた。また、CD34、CD45RO、CD68抗体を用いた二重染色を行ったところ、これらの炎症性細胞は、RAGEを発現するCD34陽性血管内皮細胞の周囲に局在していた。加えて、RAGEとAGEまたはS100抗体を用いて、蛍光二重染色法を行ったところ、RAGEを発現する血管内皮細胞血管がAGEを発現している割合は、S100発現の割合よりも有意に高かった。 従って、歯根肉芽種では血管内皮細胞が中心となりRAGE-AGEの結合が生じて炎症を惹起し、遷延に関与している可能性が示唆された。
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