直接覆髄法には、水酸化カルシウム製剤が第一選択として応用されてきたが、硬組織形成が認められる反面、辺縁漏洩性、溶解性、トンネル状欠損などの問題点が報告されている。本研究の目的は硬組織形成に関与する種々の材料に着目し、骨芽細胞や歯髄細胞に対する影響を調べ、歯内療法への応用の可能性を検討することである。 平成21年度では硬組織形成に関与する材料として自己硬化性リン酸カルシウム(Calcium Phosphate Cement ; CPC)を使用した。CPCは骨移植材として使用されており、リン酸カルシウムを主成分としたセメントである。これまでに歯内療法領域での応用はあまり報告されておらず、詳細なメカニズムは不明である。また、配合比を変えることにより物理・化学的性質を変化させることができる利点もある。そこで、本年度では解析の条件設定確立を目的とし、まず株化骨芽細胞を用いて行った。実験材料はCPCと代表的な歯内治療用セメントであるMTAとSuper EBAを使用し、材料を使用しなかったものをコントロールとして細胞と共培養した。 細胞増殖およびアルカリフォスファターゼ(ALP)活性に与える影響を培養14日まで解析した。その結果、すべての材料で経日的に細胞数とALP活性は増加したが、CPCとMTAはコントロールと統計学的有意差は認められなかった。しかしながらSuper EBAでは有意に低かった。 また、骨形成に関与するタンパク質としてオステオポンチンならびに細胞接着因子としてインテグリンαVならびにβ3についてReal-time PCR法にてmRNAの発現を調べた。その結果、細胞増殖ならびにALP活性値と同様にCPCとMTAに統計学的有意差は認めなかった。 以上の結果より、CPCは代表的な歯内療法用セメントであるMTAと同程度の生体親和性と硬組織形成を促進させる作用を認めた。現在、治療のために抜去された歯より採取した歯髄細胞にて同様な実験を遂行しているところである。
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