直接覆髄法には、水酸化カルシウム製剤が第一選択として応用されてきたが、硬組織形成が認められる反面、辺縁漏洩性、溶解性、トンネル状欠損などの問題点が指摘されている。本研究の目的は硬組織形成に関与する種々の材料に着目し、骨芽細胞や歯髄細胞に対する影響を調べ、直接覆髄法への応用の可能性を検討することである。 平成22年度では供試材料として平成21年度に使用した自己硬化性リン酸カルシウム(Calcium Phosphate Cement;CPC)以外に、硬組織形成細胞の分化や石灰化を促進する5-Aminoimidazole-4-carboxamide-1-β-4-ribofuranoside(AICAR)および新規合成移植材料であるTitanium Medical Apatite(TMA)にも着目し、細胞培養を利用した基礎的実験を行った。その結果、0.5~1.0mM AICAR投与群におけるヒト歯髄細胞の増殖はコントロール群に較べ濃度依存的に抑制され、AICAR0.5mMでは細胞分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性がコントロール群より有意に高かった。また、TMA真空焼結体を骨芽細胞様株化細胞ROS17/2.8とin vitro条件下で培養し、細胞増殖ならびにALP活性に及ぼす影響について調べたところ、何も設置しなかったコントロール群とTMA群において細胞数およびALP活性値に統計学的な有意差は認められなかった。以上のことからAICARおよびTMA真空焼結体は昨年度から解析していたCPCと同様に、硬組織形成細胞への高い生体親和性を保持しながらALP活性を上げて細胞の分化を促進する可能性が示唆された。 次に、これらの材料の臨床応用に向けてin vivoの動物実験(ラットおよびマウス)も合わせて行った。皮下組織内へ材料を移植したところ、in vitroと同様に高い生体親和性を免疫組織学的検索によって確認し、現在、露髄させた臼歯部に貼付して硬組織形成促進作用に関して解析を遂行している。
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