研究概要 |
平成22年度の本研究の具体的到達目標は,h-SMSCsを用いた象牙芽細胞分化メカニズムについて基礎的検討と,in vivoの実験系において,大腿骨表層と切歯生活歯髄切断面に象牙質の再生を観察することであり,以下の結果を得た.1.歯髄創傷治癒に関与する細胞外マトリックス(ラミニン、コラーゲンタイプI)に対する細胞接着能と運動能の検討(中田):α7 integrin陽性細胞の象牙芽細胞分化誘導前後のラミニン-1,-2とコラーゲンタイプIといった細胞外マトリックスに対する細胞接着能と運動能の解析を行った.その結果,α7 integrin陽性細胞は細胞外マトリックスであるラミニン-1,-2に対して約60%の接着能を示し,象牙芽細胞への分化誘導により,その接着能は20%にまで減少した.コラーゲンタイプIに対してα7 integrin陽性細胞は,約10%の接着能しか示さなかったが,象牙芽細胞への分化誘導によりその接着能は60%にまで増加することが明らかになった.α7 integrin陽性細胞の細胞外マトリックスに対する運動能の解析において,ラミニン-1,-2に対して高い運動能を示し,象牙芽細胞への分化誘導によりその運動能は約40%にまで減少した.また,コラーゲンタイプIに対してα7 integrin陽性細胞はほとんど運動能を示さなかったが,象牙芽細胞への分化誘導により,その運動能は約9倍にまで増加することが明らかになった.2.in vivoにおける,α7 integrin陽性細胞を用いた象牙質再生の観察(中田・尾関):分化誘導した7日目の象牙芽細胞を,8週齢の雄性ウィスターラットSTの上顎切歯生活歯髄切断面に移植した.移植2週後に上顎切歯を摘出し、通法に従い4%パラホルムアルデヒド固定と10%ギ酸による脱灰を行い,パラフィン切片を作成した.HE染色による形態学的観察と象牙質に特異的なマーカーであるDSP(象牙質シアロタンパク質)の発現を免疫染色法を用いて観察した.その結果,象牙芽細胞に分化誘導したα7 integrin陽性細胞の移植群では,著明なDSP陽性細胞と骨様象牙質が観察された.
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