研究概要 |
患者の治療時、できる限り少ない侵襲でとどめるという考え、すなわちminimal intervention(MI)のコンセプトが歯科医師の間で浸透しつつある。う蝕治療に関してもMIにより歯の削除量を減らすためにう蝕を染め出すう蝕検知液の改良やう蝕を選択的に削除する器機の開発が行われてきた。我々は平成18年度から2年間、文部科学省科学研究補助金(基盤研究(C))「レーザーの色吸収特性を用いたう蝕の選択的除去」において、半導体レーザーが特に緑と青のう蝕検知液によく吸収され、う蝕を選択的に除去するのに適していることがわかった。その研究過程で、色だけではなく、2940nm、すなわち3400cm^<-1>付近にレーザーの吸収特異性を有する第1級アミノ基を有する化合物を配合することによりEr:YAGレーザーの吸収を良くする事ができることが判明した。色による選択性ではあまり吸収特性に影響を受けなかったEr:YAGレーザーであるが、歯質の削除には最も適したレーザーであり、また組織透過型の半導体レーザーよりも表面吸収型であるEr:YAGレーザーの方がより安全に、かつ効率的に選択的う蝕除去が可能になるのではと考えられる。今回、我々はう蝕除去に最も適しているEr:YAGレーザーの第1級アミノ基を有する化合物に対する吸収特異性に注目し、この第1級アミノ基を有する化合物を配合したう蝕検知液を作成し、う蝕部をレーザーマーカーにより染色し、染色された部分のみを削除することを試みる。平成20年度は配合量の検討を行った。第1級アミノ基を有する化合物を10,20,30%配合したレーザーマーカーを研究協力者である日本歯科薬品株式会社研究所第一研究室長である横田氏に開発を依頼し、試作したレーザーマーカーをくぼみのあるスライドグラスに滴下し、気泡の入らないようにカバーグラスを静置し、Er:YAGレーザーを照射し、透過するレーザーのエネルギー量をレーザーエネルギーセンサーで測定し、その吸収率を算出し、Er:YAGレーザーの第1級アミノ基を有する化合物を配合したレーザーマーカーに対する吸収特異性を確認した。確認後、研究分担者である大阪大学・工学部・粟津教授と連携研究者である光産業創成大学院大学・部谷学准教授と化合物の配合量と吸収率について検討を行った結果、Er:YAGレーザーに対して,選択的除去ができる可能性が示唆された.
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