研究概要 |
雄性SD系ラットの上顎左右第一臼歯の近心隣接面に象牙質窩洞を形成し,試作CPCセメントで覆髄した.実験期間を1時間,6時間,1日,4日,7日とした.アポトーシスをTUNEL法により検出した.窩洞形成1日後に認められたTUNEL+細胞は全TUNEL+細胞の約60%がED1+であり残り約40%がED1-だった.TUNEL+/ED1+細胞は大部分が胞体内にTUNEL+の核のみを持つ細胞で,同様のTUNEL+/ED2+細胞もごく僅かに認められた.これは単球・大食球系細胞がアポトーシスを起こしている所見と考えられる.また胞体内にTUNEL+の核とTUNEL-の核の二つを持つ細胞は,アポトーシスを起こした細胞を貪食している単球・大食球系の細胞と考える. 約40%のTUNEL+/ED1-細胞はアポトーシスを生じたED1-の細胞かあるいはアポトーシスによりED1の抗原が消失した単球・大食球であることが予想される.TUNEL法で実際生じているアポトーシス細胞の何パーセントが検出できているのか解らないが,窩洞形成1日後のTUNEL+細胞全てが消失しても正常時のED1+細胞数とはかなり差があるため,単球の血管内への流入もED1+細胞数減少に関与している可能性も考えられる.窩洞形成4日後では,炎症反応はほぼ消失し,修復象牙質の形成が認められた.TUNEL+細胞は認められずED1+細胞数も減少し正常時の数値に近づいていた.窩洞形成7日後にED1+細胞数はほぼ正常時の数値に戻った.歯髄の創傷治癒過程で歯髄内の細胞のアポトーシスが生じていること、そしてその一部は大食球系の細胞である可能性が示唆された.
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