根尖性歯周炎、特に難治性の根尖性歯周炎では数種類の特異的な細菌がバイオフィルムを形成し、その治療を困難にしていることが知られている。近年、Fusobacterium nucleatumが根尖病変におけるフレアアップ(根管治療後の急性化)に関与していることが報告されてその重要性が議論されるようになった。一方で、フレアアップには生体側の要因も関与していると考えられている。 われわれは、根尖病変におけるTGF-β1の役割について検討した。実験的に作成したラット根尖病変部に対して抗生物質ofloxacinを投与すると、TGF-β1を発現したマクロファージが増加し、その後減少した。そして、根尖部の骨形成が認められた。さらにofloxacinを投与した群ではIL-1α、IL-1βの発現が減少したが、コントロール群ではこれらを発現したマクロファージの持続が認められた。これらの結果から、TGF-β1発現の時間や量が治癒の過程に影響しTGF-β1を発現したマクロファージが一時的に増加することが根尖病変の治癒における骨新生に重要な役割を演じていると考えられる。また、不十分な根管治療が原因で口臭が発生し、患者のQOLが低下した症例も発表した。現在は根尖性歯周炎患者から臨床分離株を分離し、共凝集活性の強さを研究室保存株と比較する実験を行っている。今後、根尖病変における生体反応のメカニズムをさらに追求する予定である。また、乳酸菌が口腔内の細菌叢を変化させ健康に貢献することも明らかにした。今後は、プロバイオティクスの影響、混合感染による病変の悪化などについても検討を加えていくことを考えている。
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