研究概要 |
1. 動的咬合バランスが平衡機能と身体機能に与える影響についての検索 : 健常有歯顎者20名の咬合時と非咬合時,健常高齢義歯装着者10名の義歯装着咬合時と非装着時における動的咬合,身体重心動揺および握力の測定をそれぞれ行った.その結果,健常有歯顎者の咬合時は非咬合時と比べ,また,健常高齢者の義歯装着咬合時は非装着時と比べ,良好な動的咬合バランスが得られ,身体重心動揺の安定および握力の増加することが分かった. 2-(1). 実験的に付与した下肢長差が全身姿勢および咬合に及ぼす影響についての検索 : 健常有歯顎者14名の自然直立姿勢と下肢長差を付与した姿勢の全身姿勢と咬合の評価を行った. 下肢長差は, 踵の下に1〜10mmまで1mm間隔でインソールを順次挿入して付与した.右足に挿入した姿勢を右足挙上姿勢,左足は左足挙上姿勢とした. その結果, 全身姿勢バランスは, 右足挙上姿勢では6mm以上, 左足挙上姿勢では4mm以上の下肢長差を与えると, 即時に挙上足と同側に偏位することが分かった. また, 左足挙上姿勢における咬合バランスは, 下肢長差が7mm以上になると即時に全身姿勢の変化と同側に偏位することが分かった. 2-(2). 実験的に付与した下肢長差が重心動揺, 頭位, 頭頸部筋筋活動, 咬合に及ぼす影響についての検索 : 健常有歯顎者10名の自然直立姿勢と下肢長差を付与した姿勢の身体重心動揺, 頭位, 頭頸部筋筋活動, 咬合の評価を行った. 下肢長差は, 片足の踵の下に厚さ10mmのインソールを挿入して付与した. その結果, 身体重心, 頭位および咬合バランスは, 即時に足の挙上側に偏位し, 頭頸部筋筋活動量は,足の挙上側が優勢になることが分かった. 今後も研究計画に従い, 「咬合と全身機能の関連性解明」の一端を担うべく, 生体のダイナミックな現象である咬合,全身姿勢,身体重心動揺,身体機能の関連性を示す客観的データの蓄積およびデータベースの構築を目指す.
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