研究概要 |
本研究では,咬合と全身機能の関連性を示す客観的評価方法の構築を目的として,身体重心動揺と頭部動揺の同時計測,および頭頸部筋筋活動と動的咬合の同時計測が可能なシステムを構築した.そして本年度は,実験的に前後・左右に全身姿勢を変化させたとき,全身姿勢の変化が頭位,頭頸部筋群および咬合にどのような影響を及ぼすのか,さらに,これらの関連性,特に全身姿勢と頭位の関連性について検討を行った.被験者には,顎口腔系や平衡機能に機能障害を認めない個性正常咬合者20名を選択した.全身姿勢の変化には,ハードコルク製のインソールを用いた,左右それぞれの踵の下に1~10mmのインソールを順次挿入して左右の変化を,そして,両足の踵の下に10mmのインソールを同時に挿入して前後の変化を付与した. 実験的に前後・左右に全身姿勢を変化させたとき,1.全身姿勢と頭位の関係:(1)頭位は,全身姿勢の変化と同じ方向に偏位した.(2)全身姿勢と頭位の偏位する方向には正の相関が認められた.(3)頭位は,全身姿勢と比べ安定しており,これらの安定性には正の相関が認められた. 2.頭頸部筋群の筋活動量と咬合の関係:(1)本研究における全身姿勢の変化の設定条件では,頭頸部筋群の筋活動量に変化は認められなかった.(2)8mm以上の下肢長差を付与すると,咬合接触圧は,長い脚の方に偏位することが分かった.(3)両足の踵を10mm挙上すると,咬合接触圧は,前方に偏位することが分かった. 以上の結果から,全身姿勢,頭位,咬合には関連性の認められることが分かった、さらに,咬合と全身姿勢の関連性を示す客観的評価方法構築の一端を担うことができた.今後も「咬合と全身機能の関連性解明」の一端を担うために,生体のダイナミックな現象である咬合,全身姿勢,身体重心動揺,身体機能の関連性を示す客観的データの蓄積およびデータベースの構築を目指す.
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