研究課題
歯槽骨生検試料が全身の骨代謝状態を反映する試料として有用かどうかを明らかにする目的で、デンタルインプラント窩洞形成時に得られた歯槽骨生検試料の骨構造を検索し、全身の骨代謝状態との関連性を検討した。下顎臼歯部にインプラント埋入予定の閉経後女性5名(60-75歳、平均年齢65.0歳)と閉経前女性3名(37-48歳、平均年齢44.0歳)の計8名(平均年齢57.1歳)を対象とし、計8試料を検索した。デンタルインプラント埋入手術に先立ち、歯科用パノラマX線写真およびデンタルX線写真、下顎骨の医療用CT画像(スライス幅1mm)の撮影を行った。骨代謝マーカーとして、骨型アルカリフォスファターゼ(ALP)、オステオカルシン(OC)、血中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)、尿中デオキシピリジノリン(DPD)を測定した。さらに踵骨の骨密度を超音波骨密度測定器(CM-200;古野電気)を用いて測定した。デンタルインプラント埋入手術中に、トレフィンバーを用いて歯槽骨(直径2-3mm、高さ4-9mm)を円柱状に採取し、ホルムアルデヒド溶液中に浸漬固定した。μCT(Elescan;日鉄エレックス)を用いて微細骨梁構造を観察し、3D骨梁解析ソフト(TRI/3D-BON;ラトック)にて骨形態計測を行った。閉経前と閉経後の2群間の各計測値を分散分析(ANOVA)にて比較検討し、骨代謝マーカー値と歯槽骨微細骨梁構造計測値の相関の有無を単回帰分析にて検討した。歯槽骨生検試料は上部の緻密骨領域とそれに連続する海綿骨領域から構成されていた。閉経の有無にかかわらず、NTX値と歯槽骨海綿骨領域の骨量(BV/TV)および骨梁幅(Tb. Th)との間には、有意な相関(p=0.02)が認められた。したがって、歯槽骨海綿骨領域の骨構造は骨代謝マーカーと呼応している可能性が示された。
すべて 2008
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J Bone Miner Metab 26(5)
ページ: 409-415