研究概要 |
【抜去歯からの細胞の分離・培養と,その基礎的性質の検討】 平成20年度は,ボランティアより得た抜去歯(9~11歳)の組織切片を作製し免疫染色を行った.歯乳頭部にはVimentin,歯小嚢にはVimentin,CK14陽性細胞が認められた.続いてこれらの組織から間葉組織(歯乳頭)を分離し,酵素処理によって単一細胞化し,培養により出現したコロニーをクローニングし,歯胚由来間葉細胞を得た.同時に,抜去歯に付着した歯小嚢から上皮細胞用の培地で培養することで歯胚由来上皮細胞の分離に成功した。この間葉細胞はRT-PCRによりVimentinが,上皮細胞はCK14,amelogenin陽性であることが確認できた. そこで平成21年度は、平成20年度免疫染色を行うために作製したヒト抜去歯胚の組織切片上でamelogenin遺伝子の発現を確認するためin situ hybridizationを試みた.ヒトamelogeninのcDNAは,岡山大学大学院医歯薬学総合研究科口腔病理学分野の長塚教授より供与されたものを用いた。この供与されたヒトamelogeninのcDNAをテンプレートとして,DIG-RNA Labeling kitを用いてジゴキシゲニン-11-dUTP標識cRNAプローブ(センスならびにアンチセンス)を作製した.現,hybridization温度やプローブ濃度の条件設定を行っている. 【上皮間葉相互作用の検討】 平成20年度は,歯乳頭から得られた歯胚由来間葉細胞と歯小嚢から得られた歯胚由来上皮細胞を用いて混合共培養モデルによる培養を行ったところ,混合共培養モデルにおいて単独培養と比較してAmelogeninの発現に有意な差が認められたが,DSPPの発現に有意な差は認められなかった. そこで平成21年度は.共培養の際には細胞同士のコンタクトはない状態で液性因子のみが通過できるチャンバーを用いた分離共培養法と,細胞のコンタクトのある状態の混合共培養法を行い,ヒトamelogenin遺伝子の発現を比較検討した.その結果,平成20年度と同様に,混合共培養モデルにおいては単独培養と比較してamelogeninの発現に有意な差が認められた.しかし,上皮細胞と間葉細胞のコンタクトがない分離共培養法では,上皮細胞単独で培養したものとamelogenin遺伝子の発現に有意な差は認められなかった.この結果は,上皮間葉相互作用において,液性因子のやりとりのみでその相互作用が生じるのではなく,両細胞間のコンタクトが上皮間葉相互作用に非常に重要であることを示唆している.
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