研究概要 |
近年,義歯を使用している高齢者は欠損を放置している高齢者より自立しており生活の満足度が高いことが明らかとなるなど,補綴治療の抗加齢作用が報告されている。しかし,治療を左右する顎口腔系の機能と抗加齢作用との正確な関連は,世界的にもまだ明らかではない。本研究は,高齢者の口腔機能を総覧できるレーダーチャートを開発し,廃用性の機能低下の早期発見を治療計画に取り入れた補綴治療で抗加齢作用を増強することにより,従来よりさらに介護予防に役立つ口腔機能評価診断方法を確立することを目指すものである。本年度は,昨年度にひきつづき広島市内および島根県内各所の高齢者施設において,要介護高齢者の生活と全身および口腔機能の調査を行い,レーダーチャートの測定項目の有用性と要介護高齢者の口腔機能の長期間の変化および各種行われている介入の効果を調査した。被験者の日常生活自立度や握力等の全身機能と残存歯数,咬合支持,義歯の状態などの口腔内診査,オクルーザー(FPD-707, GC)による咬合力,舌圧測定装置(試作機TPS-350, ALNIC)による最大舌圧,口唇閉鎖力等を3か月間隔で継続的に測定し,上記を検討するとともに,関連研究情報を調査した。調査結果を集計し,全身状態と測定値間の関連性を検討した。
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