研究概要 |
本年度は歯冠用硬質レジン表面のゼータ電位と牛血清アルブミン(以後BSAと略す)の吸着実験後のゼータ電位の比較と接触角の測定を行うことによって,BSAの材料表面への吸着性について検討することとした. 被験材料には歯冠用硬質レジン8種を使用し、ゼータ電位の測定には平板状材料の表面電位が測定可能なELS-800^<TM>(大塚電子社製)を用いた.測定に際しては材料と相互作用をもたないモニター粒子として,ポリスチレンラテックス(粒径:520nm)をヒドロキシプロピルセルロースでコーティングしたものを使用し,10mM NaClに懸濁させ測定した.BSAの吸着実験ではBSAを10mM NaClに2.0×10^<-5>mol/lの濃度で溶解させた.BSA溶液を注入して30分放置し,その後セルおよびチューブ系統を10mM NaCl約50mlを流して洗浄し,10mM NaClにラテックスモニター粒子を注入してゼータ電位を測定した.吸着実験前後のゼータ電位からBSAの吸着状態を比較した. 歯冠用硬質レジン表面のゼータ電位とBSA吸着実験後のゼータ電位の比較と接触角から次のような3つの傾向が認められた.BSA吸着実験後のゼータ電位が正に大きくなった材料,BSA吸着実験後のゼータ電位が負に大きくなった材料,BSA吸着実験後のゼータ電位に有意な差が認められず,接触角が大きい材料に分けられた.以上により,歯冠用硬質レジンではBSAの吸着前後のゼータ電位と接触角の測定によって材料表面へのBSA吸着が多いものと少ないものに分けられる可能性が示唆された.今後はさらに固体面と液界面の相互作用について検討し,試料片にいろいろなタンパクなどを吸着させ,表面への唾液タンパクと口腔内細菌の吸着性の比較を検討し,新しい歯冠用硬質レジンの開発に貢献していきたい.
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