研究概要 |
脳内神経伝達物質の代謝は,ストレスや情動あるいは疼痛等により影響を受けており,特に,前頭皮質ドーパミンニューロン系は,物理的・心理的ストレスなどによって特異的に機能亢進することが知られている。歯科領域ではラット口唇への電気刺激や,口唇クリップを行うことにより前頭皮質ドーパミン量が増加することが報告されている。また,咬合の機能的障害がストレスとなり,脳内神経伝達物質の代謝を特異的に機能亢進させることも解明されつつある。しかし,咬合ストレスの前頭皮質ドーパミン系におよぼす影響について,人においての検討は十分とは言えない。 この前頭皮質ドーパミンニューロン系の機能の亢進は,同部位の神経活動を伴うものとされており,近年機器の発達が目覚しい,覚醒しているヒトの脳活動,機能を観察,計測することのできる非侵襲的脳機能マッピングでの検討が可能ではないかと思われる。現在,MEG, PET, fMRI,近赤外線マッピング法(NIRS)などがあり,それぞれその特徴を生かし,様々な分野で応用されている。そのなかで,NIRSは生体に対して危険のない近赤外線を頭蓋外から照射して,直下にある大脳皮質のヘモグロビン濃度の経時的変化をほぼリアルタイムでマッピングする力法で,連続計測,繰り返し計測が可能とされている。そこで,本年度においては、前述のNIRS,自律神経系の指標として交感神経・副交感神経の活動,免疫系として唾液コルチゾール濃度,心理学的指標として日本版STAIの状態不安尺度,被験者の感情評価をVAS値を用いて,実験的咬合干渉および下顎偏位が脳神経機能,特に前頭部へどのような影響を及ぼすかを検討した。 その結果、顎口腔系の実験的な変化が上記の特にNIRSにおける眼窩前頭前野の活動、心拍数、VAS値を上昇させる傾向であることを確認しつつある、また、この結果を論文にまとめ英文誌に投稿予定である。
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