研究概要 |
咬合の機能的障害がストレスとなり,脳内神経伝達物質の代謝を特異的に機能亢進させることが解明されつつある。しかし,咬合ストレスの前頭皮質ドーパミン系におよぼす影響については,小動物を用いた研究が中心で,人においての検討は十分とは言えない。そこで今回,近赤外分光分析法(NIRS),自律神経系,内分泌系,心理学的観点などから,1次ストレスとしての実験的咬合干渉付与時の連続計算、不快画像の提示、咀嚼などの2次ストレスが脳神経機能,特に前頭葉にどのような影響を及ぼすか検討し、咬合のストレスに及ぼす影響を解明し、不定愁訴などの治療にも役立てることを目的とし、実験を行っている。 ストレス課題として,1週間の実験的咬合干渉板(以下干渉)付与時および実験的下顎位の変位を1次ストレス課題として,測定時における2次ストレスとしては,連続計算、不快スライドの提示,干渉側でのガム咀嚼等を用いた。干渉は,歯質に対して侵襲無く付与でき,除去後は完全に干渉付与前の咬頭嵌合状態に戻せるオーバーレイタイプとした。 測定項目として、近赤外線イメージング装置OMM-2001 NIRStationを用いて脳活動状態の評価および活動部位の同定,自律神経系機能の指標には心拍間変異度を用い,ハートレーターSA-3000Pにて自律神経の活動度や交感神経・副交感神経の均衡状態等を分析した。内分泌系の指標には唾液のコルチゾール濃度を用いた。心理状態について,日本版STAIの状態不安尺度等による評価を行った。また,感情評価を10段階のVAS値を用いて評価した。 その結果、顎口腔系の実験的な変化が上記の特にNIRSにおける眼窩前頭前野の活動、心拍数、VAS値を上昇させる傾向であることを確認しつつある。また、この結果の一部をまとめた論文を現在、Journal of Prosthodontic Researchに投稿、査読中である。
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