研究課題
咬合の機能的障害がストレスとなり、脳内神経伝達物質の代謝を特異的に機能亢進させることが解明されつつある。当研究室では、これまでに実験的下顎偏位が計算時の前頭部脳神経機能などへ及ぼす影響を近赤外分光法(NIRS)を用いて検討し、単純な計算を持続することが精神的なストレッサーとして作用することや、偏位がストレッサーとなり、前頭前野の脳神経活動に変化が認められることを報告してきた。しかし、NIRSは安静時の脳循環(Hb絶対値)を測定できないという欠点がある。そこで本研究では、下顎安静時および下顎偏位時における暗算課題遂行時の前頭前野脳神経活動を時間分解分光法(TRS)をも用いて評価し、自律神経系評価としての心拍数、心理的指標としてのSTAIやVASの測定を行うことで、情動を含めたストレス反応を評価した。実験は、安静または偏位スプリントをランダムに選択し、1分間の安静、5分間の暗算課題遂行時におけるHbO_2、Hb、tHb、ならびに心拍数を測定後、10分間の休憩をとり、安静、または偏位スプリントを装着させ、同様に1分間安静時、5分間暗算課題遂行時の測定を行った。前頭前野の活動は、暗算課題施行時、安静スプリント装着下暗算課題施行時において上昇したが、偏位スプリント装着下暗算課題施行時には安静スプリント装着下暗算課題施行時に比べ減少した。心拍数は、安静スプリント装着下暗算課題施行時、偏位スプリント装着下暗算課題施行時ともに上昇傾向にあった。また心理検査の結果、偏位スプリント装着下暗算課題施行時にはSTAIスコアが有意に上昇し、安静スプリント装着時よりも不安状態にあること示した。VASスコアは有意に減少し、安静スプリント装着時よりも不快状態にあることを示した。今回の結果から、偏位は不快な反応として暗算課題遂行時の前頭前野活動レベルを下げ、自律神経系などの全身機能に影響を及ぼすことが示唆された。
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J Prosthodont Res
巻: 55 ページ: 214-220
JST.JSTAGE/jpr/55.228