研究課題
基盤研究(C)
最近の研究は、前頭前野皮質(PFC)がストレス応答系の調整に強く関与することを示しています。本研究では、まず下顎安静時および急性ストレスとして考えられる咬合不全としての実験的下顎偏位時における暗算課題遂行時の前頭前野脳神経活動を近赤外分光法(NIRS)および時間分解分光法(TRS)を用いて評価し、自律神経系評価としての心拍数、心理的指標としての日本版状態不安尺度STAIや100mmVASの測定を行い比較検討することで、情動を含めたストレス反応を評価した。実験は、安静または偏位スプリントをランダムに選択し、1分間の安静、5分間の暗算課題遂行時におけるHbO_2、Hb、tHb、ならびに心拍数を測定後、10分間の休憩をとり、安静、または偏位スプリントを装着させ、同様に1分間安静時、5分間暗算課題遂行時の測定を行った。被験者は、本研究の主旨を説明し、同意の得られた顎口腔系に異常がなく、神経学的・精神医学的疾病がない健常成人とした(東京歯科大学倫理委員会承認番号: 164)。前頭前野の活動は、暗算課題施行時、安静スプリント装着下暗算課題施行時において上昇したが、偏位スプリント装着下暗算課題施行時には安静スプリント装着下暗算課題施行時に比べ減少する傾向を示した。心拍数は、安静スプリント装着下暗算課題施行時、偏位スプリント装着下暗算課題施行時ともに上昇傾向にあった。また心理検査の結果、偏位スプリント装着下暗算課題施行時にはSTAIスコアが有意に上昇し、安静スプリント装着時よりも不安状態にあること示した。VASスコアは有意に減少し、安静スプリント装着時よりも不快状態にあることを示した。これらの結果から、偏位は不快な反応、ストレッサーとして暗算課題遂行時の前頭前野活動レベルを低下させ、自律神経系などの全身機能に影響を及ぼすことが示唆された。また、咬合不全、干渉の存在する患者について治療経過に沿って計測を行い,その評価を行っている。その結果、治療前後の比較においては、認知機能課題遂行時の前頭前野脳神経活動性の向上、心理状態の改善傾向等が認められる傾向を示す被験者と大きな変化を示さない被験者が認められた。今後,被験者数を増して検討するとともに増齢の影響、他の咬合の不調和要因も考慮して更なる検討を継続して行くことが必要と思われる。
すべて 2012 2011 2010 2008 その他
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (10件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Advances in experimental medicine and biology
51st Annual Conference of Japanese Society for Medical and Biological Engineering
ページ: 96-97